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練習校を受験することの意味

首都圏の大半の受験生にとって、本命校の入試は2月1~3日に実施されますが、練習(試験慣れ)目的で1月入試を利用する人も多いのではないでしょうか。

練習校の受験については、プロの受験指導者でも意見が分かれるところです。練習校を多く受ける方が良いという考えもあれば、少ない(あるいは受けない)方が良いという考えもあります。

個人的には、練習校をいくつか受ける方が成功率は上がると感じています。実際、当初は練習校受験に消極的だった親御さんから、志望校に合格した後に「練習校を受けて良かった」という感想を聞くことも多々あります。

ただ、そもそも「試験慣れのための受験」という発想は、一般的ではないかもしれません。練習校の話をすると「受ける必要があるのですか?」という反応をされることもあります。

練習校受験に否定的な人は、通う可能性のない(低い)学校を受けるのは時間と体力のロスでしかない(その分の時間で本命校の対策ができる)、または、練習校に合格することで気がゆるむ(本命校の受験に向けて頑張れなくなる)、のいずれかの根拠であることが多い印象です。

後者(気がゆるむ)については、練習校受験の実例を多く見てきましたが(私が関わった難関校受験生の9割以上は練習校を受験します)、まず心配ないというのが実感です。

確かに押さえの学校に合格して少し気がゆるむ(開成や桜蔭を目指す受験生が渋幕に合格した場合など)ことはありますが、それは有力な進学先が確保できたことによるもので、試験慣れ目的の練習校とは事情が違います。仮に練習校に合格しても、基本的には「有力な進学先」にはならないため、それが原因で気がゆるむということは少ないものです。

一方で、前者(時間と体力のロス)については一理あります。個人差がありますが、受験生によっては練習校を必要最低限に絞る方が適している可能性もあります。

ただ、練習校を多く受けることが致命傷になる場合は少ない(というより、ほとんどない)のですが、練習校を十分に受けないことが致命傷になる場合は少なくありません。

実際に練習校を受けた受験生の多くが口にするのは、思ったよりも緊張して本来の実力が出せなかったということです。特に受験会場の異様な雰囲気に飲まれて、不安定な精神状態で試験に臨んでしまったという話が多いものです。

本番に強いかどうかには個人差があり、1校目の受験で普通に実力が出せる受験生もいれば、4校目で初めて本来の実力が出せる受験生もいます。平均すると2、3校目で実力が出せるようになる受験生が多いのではないでしょうか。

1校目で実力を出せる受験生は多く見積もって20%程度であるのに対して、4校目までに実力を出せる受験生は90%程度だというのが私の実感です。つまり、本命校の前に練習校を3校受けておけば、かなりの確率で、本命校入試では本来の実力が出せることになります。

練習校受験のもう一つの効果は、その経験が「カンフル剤」のような役割を果たし、直前期の実力の伸びを加速させてくれるということです。

練習校とは言え、本物の入試は模試とは違うスリリングな経験であり、良い意味での緊張感が生まれることが多いものです。直前期は学習の質が上がることが多いのですが、練習校受験が良い意味で刺激になれば、それがさらに加速されます。
 

​※本記事は、拙著『中学受験を成功させる算数の戦略的学習法・難関中学編』の内容を転載したものです。

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