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計算力がなければ本題に集中できない

最終的に難関校に合格する受験生は、基本的には計算力が高いものです。実際、私が関わってきた中では、計算力に難がありながら難関校に合格した受験生は、過去に一人もいません。

計算力には速度(スピード)と精度(正確さ)という2つの要素があります。速度、精度ともに一定以上のレベルがあれば計算力が高いと言えますし、速度、精度の一方、またな両方に難があれば計算力が低いと言えます。

計算力に難があると言うと、テストでの計算ミスを想像する方が多いかもしれません。確かに計算ミスで痛い失点をしたために塾のクラスが落ちた、といった話も少なくありません。しかし計算力に難がある場合、特に難関校受験においては、テストよりも普段の学習に与える影響の方が深刻で大きいものです。

計算の速度に難がある場合、普段の学習において量をこなすことが難しくなります。例えば、計算の速度以外の実力が同じ受験生が3人いて、3人とも問題の解法を考えるのに1分かかり、その後の処理に、計算速度の速いA君は1分、平均的なB君は2分、計算速度の遅いC君は3分かかるとします。単純に考えると、この3人が1時間勉強した場合、こなせる問題数はA君が30問、B君が20問、C君が15問となります。

しかも、計算の速度が遅い方が処理に負担がかかることが多いので、A君は30問が終わった後でも余力があってそのまま継続できる一方で、C君は15問が終わった時点で疲れてしまうので休憩をとらないと苦しい、ということが起こります。つまり長時間の学習では、上記の数字以上の差がつくことになります。

計算の精度に難がある場合、普段の学習において質を保つことが難しくなります。問題を解いて答え合わせをする際、答えが合っていれば丸をつけてそのまま次の問題に進めますが、答えが合わない場合は、まずは解説を見て原因を特定する必要があります。

まだ解説の解法が自分と同じであればスムーズに確認できますが、別の解法だった場合、自分の解法が妥当なものだったのかどうかを確認することも必要になります。最終的に原因が特定できたとしても、特に扱う問題のレベルが上がるほど、この作業に要する時間と労力は大きくなります。計算ミスが多く、仮に3回に1回の確率で計算ミスをするとしたら、それによる時間と労力のロスはあまりにも大きくなります。

そういう苦労が本物の実力を育てる、といった考え方もあるのかもしれませんが、現実的な話、難関校受験においてそういう悠長なことをして勝つのは難しいものです。実際、難関校受験で成功する受験生は別の次元で勝負しています。計算力がなければ、難関校受験の土俵に上がること自体が難しくなります。

​※本記事は、拙著『中学受験を成功させる算数の戦略的学習法・難関中学編』の内容を転載したものです。

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