中学受験の戦略
中学受験算数専門のプロ家庭教師・熊野孝哉の公式サイト
時間度外視の学習には再現性がない【追記版】
今回は、9年前(2016年5月)に本(算数の戦略的学習法・難関中学編)
で書いた記事について、具体的な対処法を追記したものとなります。
今でも親御様にお話することが多い内容ですが、よろしければご参考ください。
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受験指導をしていて感じるのは、
時間の制約に無頓着な受験生があまりにも多いということです。
例えば、筑波大学附属駒場中学の算数は、問題自体も易しいわけではありませんが、
難しさの本質は40分という制限時間にあります。
問題を変えずに制限時間を60分にすれば、試験の難易度は一気に下がります。
筑駒の大問1の(1)を20分かけて解いて「筑駒の問題が解けた」と言って喜ぶのは、
4年生くらいであれば意味のあることですが、5年生以降にその感覚を持っているのは危険です。
大半の受験生は「問題が解けたかどうか」という目線を持っていますが、
難関校受験に成功する受験生は、その目線に加えて「一定の時間内に解けたかどうか」
という目線も持っている傾向があります。
一定の時間内に解けたかどうかは、
結局のところ、再現性があるかどうかということにつながります。
難関校合格者の多くは、その目線を持つことで再現性のある学習を行っています。
普通の模試は多くの場合、50分の制限時間で約30問、
つまり1分40秒で1問を解くという作りになっています。
自宅学習で、ある問題を10分かけて解けたとします。
その類題が試験に出た場合に1分40秒以内に解けるのであれば「再現性がある」
ということになりますが、どうでしょうか。
10分かけて解けたということは、それなりに苦戦したはずです。
たまたま正解にたどり着いたという可能性もあります。
その類題を短時間で解ける可能性となると、決して高くはないでしょう。
一方で同じ「解けた」でも2分で解けた問題は、
類題が試験に出た場合に1分40秒以内に解ける可能性は十分にあります。
2分で解けたということは、十分に理解しているはずです。
理解している上に、既に経験した作業(処理)を再現するだけなので、
普通は少し時間が短縮できるはずです。
逆に2分以上かかる可能性の方が低いでしょう。
私は家庭教師で課題の確認テストをする際に、例えば1問5点満点とすると、
2分以内に正解したら5点、2分を超えて4分以内に正解したら3点、
4分を超えて正解したら1点、といった採点をすることがあります。
この採点方法には、時間度外視の正解・不正解による評価ではなく、
類題が試験に出た場合に対応できるかどうか(再現性があるかどうか)
によって評価するという意図があります。
理解の状況が「時間をかければ解ける」というレベルだと、
この採点方法では40点前後の結果になることがあります。
逆にこの方法で80点以上とれている受験生は、
多くの場合、模試でも突出した成績を残しています。
時間を意識することは、すべての受験生にとって必要なことですが、
特に難関校受験生は強く意識していく必要があります。
【追記】
本編でも少し触れましたが、自宅学習において、
同じ「正解」でも所要時間によって評価を区別することにより、
再現性のある取り組みを習慣化することができます。
問題のレベルにもよりますが、例えば2分以内に正解した問題は「◎」、
2分を超えて正解した問題は「○」というように、
所要時間込みの結果を記録しておくのも有効な方法です。
○印の問題については、後日、改めて解き直しを行い、
◎になるまで反復していきます。
正解した問題が50問でも、その内訳が「◎10問、○40問」だと
再現性が非常にあやしいのですが、
「◎40問、○10問」だと十分な再現性を期待できます。
最初は面倒に感じるかもしれませんが、
成功例の多い方法ですので、よろしければご参考ください。